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鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

鍼灸抜萃に学ぶ その二

「○○病には××のつぼが効く」という観点で古典を読むこともできるが、からだの診方や病(やまい)に対する基本的な考え方やその背景を知ることが重要である。また、江戸期のこれらの書では、素問霊枢をはじめとする中国の古典医学をどのように取捨選択し咀嚼しているか、その変遷を想像することもおもしろい。「気の論治」と「欝証の論治」について各書の記載について以下に記す。

鍼灸抜萃の記載

気の論治

素問に曰く。恬憺虚無なれば真気これに従う。精神内に守れば病いづくにか従ってきたらんとなり。諸病はみな喜怒憂思恐驚より生ず。五気の論に曰く、喜んで虚すれば腎気乗ず。憂いて虚すれば、心気乗ず。怒って虚すれば、肺気乗ず。悲しんで虚すれば、肝気乗ず。恐れて虚すれば、脾気乗ず。これ五臓のうれふるところなり。丹渓がいわく、一身を周流して以て生命をなすものは気なり。

九気の説。挙痛論にいわく、百病は気より生ず。怒る時は気のぼり、喜ぶ時は気ゆるし、悲しむ時は気消ず。恐れる時は気くだる。驚く時は気みだる。労する時は気耗す。思う時は気むすぶ。暑き時は気泄す。寒き時は気おさまる。 子和曰く、天地の気常になるときはやすく、変するときは止む。人は天地の気をうく。五運をたがひに外を侵し、七情こもごも内にたたかう。かるがゆえに古人は気を惜しむこと至れる宝をもつがごとし。諸病はみな七情よりおこる。七情なくして飲食房事をたしなむ人は寒暑にもさへられず、易く千歳をも持つべし。

肺兪 神堂 膈兪 肝兪 三里 針 承満 梁門

 

欝証の論治

それ気血通和すれば、万病生ぜず。一物怫欝するときはすなわち諸病を生ず。その欝は気血食痰湿熱より生ず。そのつねなるときは生ぜず。かさなるときはみな欝をなす。 膏肓兪 神道 肝兪 不容 梁門

「素問に曰く。恬憺虚無なれば真気これに従う。」とは「素問」の上古天真論篇にある養生法について述べている基本的な考え方である。

夫上古聖人之教下也、皆謂之虚邪賊風、避之有時。恬憺虚無、真気従之、精神内守、病安従来

荘子」刻意篇にもこのような記載がある。平易恬淡なれば、すなわち憂患も入ることがなく、邪気に襲われる(入ること)もないと。老子荘子の思想はこの恬淡虚無のあり方を理想としている。

夫恬淡寂寞、虚無無為、此天地之平、而道徳之質也、故聖人休焉、休則平易矣、平易則恬淡矣、平易恬淡、則憂患不能入、邪気不能襲、故其德全而神不虧

中国の古典は引用文献や出典など「○○曰」「○○云」という形式で書かれたものが多いが、日本のものはあたかもオリジナルのような書かれ方をしているものも少なくない。「鍼灸抜萃」はいわゆるダイジェスト版であり、古典の医学書から抜萃しているため、丹渓がいわくや子和曰くなど記載があるとろはありがたい。このことから黄帝内経だけでなく、金元の医学(李朱医学)の影響もあると推測できるのである。

鍼灸抜萃大成の記載

諸気

夫れ百病は気より生ず。喜んで心を傷る者はその気散んず。怒って肝を傷る者はその気繁れ。憂いて肺を傷る者はその気聚る。思ひて脾を傷る者はその気結ぼる。悲しみて心胞を傷る者はその気急し。恐れて腎を傷る者はその気怯す。驚きて膽を傷る者はその気乱る。云々。子和が云く、夫れ天地の気常になる寸ば安し、変するとき寸は止む。況や人は天地の気を受えて、五運をたがひに外を侵し、七情交も中に戦う。是を以て聖人は気を惜しむこと至宝を持つが如く庸人は物を投て反って、大和を傷る軒岐の論ずる所なり。

鍼灸法
膏肓 肺兪 神堂 膈兪
肝兪 三里 承満 梁門 気を導くべし

 

欝証

夫れ人の気血通和すれば、万病生ぜず。一も怫欝すること有れば、諸病を生ず。故に人の諸病は多くは欝より生ず。欝すれば結聚して發越せず。是を升すべきに升らず、降すべきに降らず。変化すべきに変化せることを得ず。所以に轉化常を失して六欝を生ず。六欝は気血湿食痰熱なり。

鍼 穴名諸気の下に見えたり

鍼灸重宝記の記載

諸気 気の脉は枕なり

経に曰く。百病は気より生ず。喜んで心を傷るときはその気散じ、腎気乗ず。怒って肝を傷るときはその気のぼり、肺気乗ず。憂いて肺を傷るときはその気聚り、心気乗ず。思ひて脾を傷るときはその気結ぼれ、肝気乗ず。恐れて腎を傷るときはその気怯く、脾気乗ず。暑き則は気泄れ、寒ずるときは気おさまる。 もし恬憺虚無精神内に守れば、病何によつてか生せむ。

▲灸 肺兪 神堂 膈兪 肝兪 三里
▲針 承満 梁門に刺すべし

 

欝証

気血通和すれば、万病生ぜず。一つも結聚するときは六欝となる。気欝は腹脇脹満刺すごとく、痛みて舒ず。脉沈なり。血欝は大小便紅に紫血を吐きいたみ處を移ず、脉数濇なり。食欝は曖気呑酸胸腹飽悶いたみ不食、右脉盛なり。痰欝は喘満気急痰嗽胸脇いたみ、脉滑なり。熱欝は小便紅く渋り五心熱し口苦く舌乾き、脉数なり。湿欝は身節走いたみ陰雨に遇へば發り、脉濡なり。

▲膏肓兪 神道 肝兪 不容 梁門