鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

鍼灸抜萃に学ぶ その九|打鍼(うちばり・だしん)

鍼術の手法(2/4)

打鍼(うちばり・だしん)

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打鍼はふかく刺すことなかれ、浅くして効あり。一身は栄衛を以て主とすることなり。栄衛は気と血との二つなり。霊枢経にも浮気の経に随ひ運(めぐ)るものを衛気と云。その精気の経にしたがひて運を栄気と云。気は血道の外を浮て軽く運ぞ。血は筋の底を流循することなり。気は陽衛是なり。血は陰栄是なり。気は外をめぐらしめ肌肉を温め、血は筋のうちをながれて肌膚をうるほす。されは気血は十六丈二尺の脉道を一呼に行くこと三寸。一吸に行くこと三寸。呼吸定息脉行くこと六寸。一昼一夜に一萬三千五百息脉行くこと八百一十丈昼夜百刻のあいだ五十篇めぐるなり。気の往来血の流通大過不及。虚と実とによって諸病を求む。打鍼の理是による。鍼ふとくして槌にて撃(うつ)によりて衛栄を甚(はなはだ)動揺し骨髄に徹す。

打鍼は腹部に浅く刺すことを特徴として、槌を用いて振動(バイブレーション)を与えることは他の鍼術と異なるところである。上記赤字の内容は下記段とやや重複している。重要な内容である為か校閲の誤りか、なんとなくつながりが悪いような気もする。また、経脈の速度などは打鍼の項になくてもよいのではないだろうか(この部分を引用して置鍼の時間を1日に50回経脈が循ることから、30分(24時間×60分/50回=28.8)行うとの説明をされる人もいる)。「鍼灸抜萃大成」ではこの部分が削除されている。納得の編集である。

手法は病人に立より左の足をしき、右の足を立てて槌を右の足の甲の外づらにならへをくへし。先槌の置きどころさだめざれば、置きわするるものぞ。さて鍼を口に含み、左の手にて病人の腹をうかがひ見て、中指を食指のうしろに重て穴處に置き、鍼を中指食指の間にはさみ、鍼鋭(さき)の肌につかぬほどにして槌をとり鍼を打なり。打やうに口傳あり。手軽にして皮を切るに痛まぬやうにうつなり。入ること一分にして槌に手こたえあり。これより二三分にも至る。深きをきらふぞ。打て栄衛をうごかし、推て肉の内に徹し撚て補瀉迎隨を行ふぞ。鍼出して後孔閉よ。推手つよく槌をかるくうつべし。推手よはく槌にまなりあれば痛(いたむ)ぞ。なまると云はたとへは田舎のもの云ふ如し、或はなまり或は言説不分なり。槌の打様は、しどろになき様に一二をかぞゆるが如く、手づまよくうつべし。打鍼の本意は腹ばかりに用て外の経にかかわらぬぞ。其深意は諸病の本五蔵にあり。格致余論曰く、病の本あることは草の根有るごとし。葉を去れとも根をさらざれば草なおあり。病を治すること、草を去る如きぞ。病の蔵に有るをしかも腑を治し、病変に有て而も裏を攻むとあり。諸病は皆五蔵より生ず。然るにより病を治するに其本に求て治するか本意そ。或は、目筋爪を病むときは肝の府に鍼を刺すぞ。鼻皮息を患るときは、肺の府に鍼刺す。餘は皆この例に傚(なら)へ。諸病の見るるところを見て其本にもとづいて治を作す。打鍼は腹より外に用ゆるは本意にあらず。入ることも一二分より深を要とせぬぞ。槌に手ごたへあれは骨髄に徹するぞ。口傳これあり。

まず、無分斎と御薗意斎の関係について確認しておこう。「本朝医人伝」から引用。

夢分斎
初め禅僧たりし時その母久しく腹痛を患て百万治せず、夢分斎之を憂ひ神仏に祈るも驗を得ず、後多賀法印にて従ふて鍼術を学び、京都、柴野大徳寺閑松院にあり、遂に其術を以て母の沈痾を全治す、後に瓢然西方に遊び、鍼術を以て活す所数萬人、終にその術を御薗常心(意斎)に傳ふ、門人奥田意伯その傳を得、洛陽に住して術を弘む。

夢分流の打鍼術について解説された代表的な書に「鍼道秘訣集」(1685年)がある。また、森共之編著による御薗意斎流鍼術の秘伝書に「意仲玄奥」(1696年)がある。

打鍼の項下段では丹渓「格致余論」治病必求其本論からの引用「病之有本,猶草之有根也。去葉不去根,草猶在也。治病猶去草。」がある。打鍼というスタイルは日本独自のものであるが、その理論的背景には李朱医学の影響が窺える。御薗意斎の書とされる「陰虚本病」(1597年)では、「格致余論」と「医学正伝」を基本に理論が展開されている。「陽実陰虚、気常有餘、血常不足」に見られるように陰虚を病の本としている。

(引用文の異体字や旧字について一部変更)

弁釈鍼道秘訣集―打鍼術の基礎と臨床

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ビジュアルでわかる九鍼実技解説 ~九鍼の歴史から治療の実際まで~

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