鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

韓流ドラマ「馬医」の鍼灸治療について(1/X)

実際のテレビ放送では、全50話あるので週に2回の放映で6カ月かかることになる。最近の日本のドラマと比べても長編であるが、最後まで面白く鑑賞できた。

ネット上では辛口のコメントも散見されるが、概ねストーリー展開のマンネリ化を指摘したものが多い。前作「チャングム」や「ホジュン」とも内容が似通っているということであるが、たとえストーリーの展開や結末が予想できたとしても、役者の演技やディテール、鍼灸や手術の場面など見どころは多い。また、クァンヒョン役のチョ・スンウは好演しているので、NHKで放映されれば日本でも人気が出るに違いない。

フィクションとはいえ、ドラマの中で描かれている鍼灸治療のシーンで興味深いものが幾つかあったので振り返ってみたい。中国語の字幕で理解したので、日本語訳や原作(韓国語)と意味が異なる所があるかもしれない。また、私の中国語能力も怪しいものなので、内容は参考までに。

第5話 馬の治療

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クァンヒョンの子供時代、傷を負った馬を舍岩(サアム)の所に連れてきて、治療を依頼する。しかし、舍岩は人間を治す医者で獣医ではないので動物の治療は出来ないと断ってしまう。それに対して、クァンヒョンは「獣医も医者も命を救うことは一緒じゃないか、命に貴賎の別があるのか」と食い下がる。それを聞いて舍岩は「それでは治療をしてやろう。馬の鍼具をもって来い。」という展開になる。このクァンヒョンの言葉はこのドラマの一つのテーマとなっているのであろう。

舍岩が馬に鍼を刺そうとするが、馬が暴れてなかなか刺すことができない。そこで、馬に慣れているクァンヒョンに鍼を刺すように指示をする。馬を鎮静させ、傷口を縫合するために臑兪のツボに鍼を刺せという。

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中国では紀元前から馬の鍼治療が行われていた。人間と同じように馬にも経絡が存在するとして、多くのツボが存在する。以前購入した「中国獣医針灸療法」にはこの鎮静穴である臑兪の記載がなかったので、一般的な治療法であるかどうかは不明である。

第7話 馬の鍼麻酔

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清国に贈る馬が病気(肺風)になってしまう。肺風の治療には五参散を服用するのであるが、馬が暴れて薬を飲もうとせず、口に入れても吐き出してしまう。万策尽きた所で、クァンヒョンが鍼治療で治すことができると進言する。

治療は鎮静穴を用いて麻酔をかけ、眠ることができれば痛みが消えるであろうという。配穴は内関・足三里・三陽絡・臑兪・印堂穴・中府穴・安神穴の7個所である。

印堂穴・中府穴・安神穴は大脳や心臓に近く刺鍼の難しい部位で、一歩間違えば命の危険さえあるリスクを伴うものである。若いクァンヒョンにそのようなことができるわけがないと周りは冷ややかなまなざしで見ている。しかし…。

上記の配穴で馬を眠らせることができるのかどうかは分からないが、鎮痛鎮静穴で代表的な経穴としては、合谷・内関・太衝があげられる。合谷への刺鍼は痛みの閾値が高くなるとの実験結果が報告されている。鍼麻酔は鍼を刺した後に電流を流すこと(パルス治療)が多いように思うが、鍼が麻酔薬の代わりになるかどうかは不明である。もしかしたら、人間より動物の方が効きやすいのかもしれない。。

 

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