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鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

韓流ドラマ「馬医」の針灸治療について(3/X)

第29話 舍岩鍼法

いよいよ舍岩(サアム)道人の再登場である。サアムは実在した人物であるが、その素性はよくわかっていない。韓国語で「舍岩針法」を検索すると多くのサイトがヒットするが、日本では鍼灸師でさえ、その名前を知らない人の方が多いであろう。「針灸要訣」が日本語や中国語に翻訳されていないことも一因かもしれない。「針灸要訣」によると、その針法は相生相克に基づいた五行穴による配穴を特徴としているようである。

クァンヒョンはイ・ミョンファンの奸計に陥り、船上で刺客に命を狙われるが、間一髪難を逃れ、清国との国境に近い街に辿り着く。荷役の仕事をしながら糊口をしのぎ、外科手術を行うという舍岩(サアム)を尋ねるが、手がかりさえない状況が続く。途方に暮れていたそんなある日、街頭で青空薬房を開き、不思議な治療を行う男に出会う。この男こそ、探し求めていた舍岩(サアム)その人であった。

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最初に見た患者の症状は「肺積」である。肺積は右脇下に在って、痛み、冷え、咳嗽などを伴う。舍岩の配穴は左魚際・左太白である。その治療を見ていたクァンヒョンは「本来であれば軽割穴・肺兪穴を用いるのに…。」と訝る。字幕では、軽割穴は肩から手腕の連接部位と説明があるが、奇穴辞典に載っていなかった(調査中)。

「漢方用語辞典」による肺積の説明は、

五臓積聚の一つ。右側腹部にあり、背痛をともなう。積は五臓に気が積もったもので、聚は六腑の気が聚まったもの。≪難経五十六難≫「肺の積を名づけて息賁と曰う。右の脇下に在って、覆して大なること杯の如し、久しく已えざれば、人をして洒淅として寒熱し、喘欬して肺壅を発す。」

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「針灸要訣」の「肺積」の項には【補】太白・大淵、【瀉】労宮・魚際とある。画面を見ただけでは補瀉の区別はできないが、太白は補で魚際は瀉となる。肺は「金」とするとその母は「土」になるので太白を補い、相克の「火」である魚際を瀉すということか…。

※「難経」六十九難の「虚者補其母、実者瀉其子」(虚すればその母を補い、実すればその子を瀉す)から相生関係は説明される。

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舍岩針法では、「正格・勝格」「寒熱補瀉」などの分類により配穴が決まっているようだ。上記「肺積」の配穴は、肺経の正格の配穴に相当する。臨床では弁病配穴になっているのか、脈や症状などから判断しているのか細かいところは分からない。韓国語は理解できないので、「針灸要訣」が翻訳出版されることを期待したい。

2人目の患者は「腸癰」であった。舍岩の配穴は右足通谷・右合谷・右二間、そして右手三里である。手三里に鍼を打とうとした時に、治療を眺めていたクァンヒョンが駆け寄り止めに入る。

クァンヒョン「なんでこのようなでたらめなことをするのか!」
サアム「でたらめだと?」
クァンヒョン「さっきの患者もそうだ。診断は肺積であったが、でたらめに手と足に鍼を打った。そして今、腸癰の患者に手三里のツボに鍼を打とうとした。」
…(中略)…
サアム「そうだ。お前の云う通りだ。この患者は腸癰の顔をしている。顔色は黄色く、腹が膨れ、また嘔吐がある。お前は腸癰であると診断したので、足三里に鍼を打つと考えたであろう。しかし、それは間違っている。私の方が正しい。お前が知っている本に書いてある治療法は間違っている。私が見つけ出した治療法が正しいのだ。」

「腸癰」とは大腸や小腸の炎症、虫垂炎、闌尾炎などをいう。こじれて腹膜炎になると命を落とすこともある。

舍岩針法の大腸経勝格の【瀉】は、上記のように通谷と二間になっている。合谷は手の陽明大腸経の原穴であり、清熱・止痛作用がある。手三里を使う理由はどうであろうか…? 

中医のテキスト「実用針灸治療表解」の「腸癰」の配穴は天枢・上巨虚・地機・闌尾・合谷となっている。使用するツボについては、文献によって少しずつ異なっているが、どのように考えて選穴したのかが重要である(もちろん、治療効果が望めること)。

秋ごろNHKで放送が始まれば、ネット上にいろいろと情報がでると思われるので、続きはしばらく保留ということで。。

 

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漢方用語大辞典

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〈図でわかる〉中医針灸治療のプロセス

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