毫鍼で筋膜リリースをする方法|副挫刺法の応用
挫刺針法はファシアへ直接アプローチすることができるが、いかんせん刺激が強い。ここぞという時以外、なかなか日常的に使うことを躊躇してしまうのである。
もう少しマイルドな方法として副挫刺法がある。従来の方法では、6番ぐらいの毫鍼を刺鍼したのち、時計回りに一回転ほど回旋し、鍼に結合組織をからませる。そして、ゆっくり引っ張ると皮膚が持ち上がるので、数回雀啄を行い、引き抜くという操作である。この方法でも結合組織がからまるので、全く無痛というわけにはゆかない。
さらに、ソフトな方法として、引き抜く時に、時計と逆回りに一回転させ、からまらないようにしてから抜鍼を行う。この方法であれば、それほど違和感がないように思われる。
さて、筋膜をリリースするにはこの方法に、さらにひと工夫必要である。
毫鍼を刺入する所までは同じであるが、できるだけ斜刺・横刺にて刺入を行い、時計回りに一回転ほど回旋し、鍼に結合組織をからませる。そして、テンションがかからない程度に引っ張ったまま保持する。数秒程そのままにしていると緊張がゆるんでくる感じが手に伝わってくる。さらに、ゆっくりと引っ張り遊びを取る。その後、時計と逆回りに一回転させ、からまらないようにしてから抜鍼を行うのである。
使用する毫鍼は、鍼柄に色の着いていないものがよく、中国鍼のような鍼柄がやや長いものが使いやすい。3番ぐらいでも操作は可能である。
雀啄のようなポンピング動作ではなく、持続してリリースするところが、ポイントである。
しかし、たとえこのような方法により効果が実感できたとしても、鍼によるファシアのリリース、その機序については仮説であり、ハッキリとしたことは分かっていない。まぁ、経絡も不可知論であるので、この場で言い訳をする必要もないのではあるが。。この分野の研究も始まったばかりであるので、今後の動向に期待したい。
手技による筋膜リリースで課題となるのは、その持続効果である。「筋筋膜リリース・マニュアル」では、次のように説明されている。
慢性化した筋病変をもつ筋痛症候群にみられる、トリガーポイントを有する筋硬結を除去するのは容易でないことはあまり知られていない。‥‥ストレッチング法は筋硬結の有効的な治療法ではないが、筋スパズムや筋浮腫に対しては有効であろう。p18
最初は、ストレッチの反応が持続するという期待を持たないことである。この変化には一過性の性質がある。p25
実際の解剖実習などではファシアが肥厚していたり、筋肉が癒着していたりする様子を観察することができる。例えば、菱形筋が委縮すると小菱形筋と大菱形筋は癒着して区別がつかないこともある。そのような状態を見ると手技の限界というのも感じざるを得ない。最近、巷で流行りの骨盤矯正なども、本当に骨盤が動くんかいな。。と思ってしまうわけである。
【写真】鷄肉にもファシアがある。鶏肉に鍼を刺してファシアを絡めてリリースしている様子。ところで、イカの薄皮もファシアなのだろうか。。
【コメント】S先生、ツイートありがとうございます。この手の話は興味のある人にとっては理解していただけるし、概ねスルーだと思いますのでよろしいかと。先に人に言われるのも悔しいので。
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