自然療法は代替療法(オルタネイティブ・メディスン)の専売特許なのか
テレビや雑誌などの特集ではグルメと並んで、健康に関する話題が多いと思いませんか。
いささか情報が氾濫しているきらいもあるが、それだけ関心の高い(視聴率がとれる?)テーマなのであろう。街中の書店を覗いてみれば、家庭の医学や健康法、運動法、ダイエット、美容などのコーナーがあり、その隣には現代医学に対して批判的な書物も多く並んでいる。
病気になったら病院で治してもらうということでなく、現代医療、特に薬に頼らず自然に治療をしたいという考え方もある。医食同源という言葉があるが、食事やライフスタイルを見直すことは健康を考える上で大切なことである。東洋医学をはじめとする伝統医学、民間療法の中には、それを解決する多くの知恵が蓄積されている。
その一つの共通項として「自然治癒力」があげられる。自然良能や免疫力などとも称されるが、副作用が少なくからだにやさしい治療方法として「自然療法」とも呼ばれている。このような内容に関心の高い人であれば、東城先生の『家庭でできる 自然療法 だれでもできる食事と手当法』を想起されるのではないだろうか。こんにゃく湿布や枇杷の葉灸、食養など、身近なもので対応できるものが多く紹介されている。
あまり話題にならないが、それより以前には、多田政一氏が提唱された「綜統医学」や原栄医学博士の『自然療法』がある。この原栄氏の著書は、大正から昭和初期にかけての療術や霊術、民間療法には多大な影響を及ぼしたようである。
自然療法について次のような記載がある。一部引用。
人間の身体には自然的に病気に抵抗し、その罹患を防御し得る活力があり、又病気に打ち勝ってこれを治癒に導き得る自然の療能があります。且つ吾々の精神には意志の力をもって肉体を訓練し得る偉大なる霊能があります。この二つの能力を良く理解し、これを日常生活上に巧みに応用して吾々の身体の健康を増進し、又吾々の疾患を治癒に導いて行くことができる。この方法を私は自然療法と名くるのであります。
医師である原氏は結核の研究、治療をご専門とされていたようである。
慢性疾患殊に肺結核症のごときはその療養上病者は何者よりも自己の身体に存する自然の療能に信頼しなければならぬ。
いかなる病気に拘わらず、疾病の治癒に與かる主体は医師でも薬剤でもなく、自己の身体に存する自然的活力であるということがいえます。
新しく自然療法についての書籍も出版されているが、基本的な考え方の多くは本書に網羅されているように思われる。また、医師として現代医療に対する問題提起は傾聴に値する。
残念ながら本書は絶版であるので、一般ルートで入手することは困難かもしれない。時々、古書サイトで見かけるので、タイミングが良ければ購入できるかと。ご興味のある方は、ご一読ください。