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鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

背部の凝りと痛み(2/X)|胸腰筋膜と太陽膀胱経 

ファシア 超音波装置(エコー)

背部の浅層は数種類の筋で覆われている。太陽膀胱経の流注上を見ると、大ざっぱではあるが上部は僧帽筋、下部は広背筋(胸陽筋膜)となる。

僧帽筋は頚背部にある三角形をした筋であり、下行部の起始は第12胸椎の棘突起になる。膀胱経は脊柱の外方1.5寸に位置しているので、おおよそ膈兪(第7胸椎棘突起下、両側1.5寸)ぐらいまでが、僧帽筋と重なると考えられる。

広背筋は、胸腰部の後面を広く覆う三角形の筋であり、胸腰筋膜を介して第7胸椎~第5腰椎の棘突起仙骨の正中仙骨稜および腸骨の腸骨稜、第10~12肋骨、肩甲骨の下角までが起始となる。肝兪から下の腧穴は広背筋、胸腰筋膜が浅層筋となる。

脾兪、胃兪辺りの部分をエコーを使用して短軸で観察してみると次のような画像となる。

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黄色のラインは、上線が体表から5mm、下線が10mmの位置にある。ここで前回の腧穴の深さを思い返していただきたい、「3分は6.75ミリ、5分は11.25ミリ」とある。だいたい上線と下線の間にあてはまると考えられないだろうか?

ファシア(筋膜)にはレセプターが筋よりも多く存在しているといわれているので、施術者が3分や5分で知覚できるものは、一つには筋膜の抵抗感、もう一つは得気(響き)であろう。つまり、深さの指標で意味しているものは、重積したファシア(筋膜)に対するアプローチなのではないだろうか。

江戸期の鍼師、坂井豊作はさまざまな症状に対して横刺法を主として治療を行ったとされる。下図は『鍼術秘要』から引用。

 

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背部の膀胱経に沿って、毫鍼を並べるように刺針しているのが分かるであろうか。エコーの画像と比較してみると、ちょうど鍼先は5ミリ~10ミリの付近にあるのではないかと想像される。

この刺鍼法の応用として長鍼を臨床では使用している。

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黄色で囲んである所に鍼が見える。鍼の仕事が全てファシア(筋膜)のリリースということではないが、刺鍼の深さの意味を考える上で、ファシア(筋膜)の機能を知ることは新しい発見となるのではないだろうか。

最近は軽く鍼を接触したり、浅い刺鍼が注目されているようではあるが、エコー画像を見て分かる通り、ファシア(筋膜)には届いていないので、効果があるとすると別の治効理論を提示しなくてはならないだろう。

体表から骨までレイヤー(重層)構造になっているので、その深さを考慮して鍼を打たなくてはならないのは当然である。浅い鍼は痛くない(下手な人は浅くても痛い!)とか、深い鍼は刺激が強いという不毛な議論ではなく、何のために鍼を打つのかということがすっぽり抜けているように感じるのは気のせいだろうか。

【参考文献】

骨格筋の形と触察法

骨格筋の形と触察法