鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

鏃(やじり)と鋒鍼|「始皇帝と大兵馬俑」展にて

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東京国立博物館で開催されている「始皇帝と大兵馬俑」展に行ってきた。閉館まじかということもあり、訪れている人もまばらでゆっくりと見学することができた。先月、西安兵馬俑にも行ったのであるが、見落としているものも多く、新しい発見も幾つかあった。埴輪が赤色や青、白など鮮明な色で彩色されたCGの映像は興味深かった。製作された当時、彩られた兵士が隊列を組んで並んでいる雄姿はさぞや壮観であったに違いない。

少々マニアックな話になるが、鍼灸治療で用いる鍼にはさまざまな形状のものがある。そのなかで、刺絡をする場合に使用する鋒鍼と呼ばれる鍼がある。前漢の頃に書かれたとされる「黄帝内経 霊枢」には次のように記載されている。

四曰鋒鍼.長一寸六分.鋒鍼者.刃三隅.以發痼疾.

後漢の頃だと一寸がおよそ2.3センチほどになるので、一寸六分とすると3.68センチ、4センチに満たない長さになる。また、現在使用している鋒鍼(三稜鍼)の先端の形状は、三角錐(下図左)や韭葉(下図右)のものが主流である。先日の伝統鍼灸学会でU先生が三隅とは先端の形状ではなく、全体の形を指しているというような話があったように思う(記憶が定かではないが)。

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今回の展覧会でも展示されていた箭の鏃の形状を見てはたと閃いた。

「鋒鍼の原型は鏃じゃないの?」

ここからは妄想です。

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上図左下の鏃をご覧いただきたい。その形状は霊枢の記載に近いのではないか。

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秦の時代には投射兵器として弓や弩(ど)が使用されていた(右図)。そして、弩は弓よりも飛距離があり、貫通力にも優れていた。弓の有効射程が100mとすると、弩は約300mほど、実際には150mぐらいの距離で使用されていたらしい。

鏃は概ね5センチ前後で、その形状にはさまざまなものがある。殺傷力を増すためには、刺さると抜けないような形状に加工されることが多く、素材は主に鋼が使用されていたようである。

鍼具の素材や形状について考えると、その性能は金属の鍛造や冶金技術、加工技術に負うところが多い。細くて折れない鍼を製造するためには、高い製造技術が必要になるということである。

鍼具の出土品が限られているので、その形状は残された文章から想像するより手だてはない。活殺は表裏であるので、箭の先端に取り付ける鏃を利用したと考えることも、あながち的外れではないと思うのだが。。

zhenjiu.hatenablog.com

 

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