鍼灸鷄肋ブログ

鍼灸に関する内容や日々の出来事を紹介します。世田谷区祖師谷「鍼灸指圧自然堂」から発信しています。

韓流ドラマ「馬医」の鍼灸治療について(2/X)

第23話 乳がんの手術

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ドラマの 中盤から鍼灸や湯液だけでなく、外科治療のシーンが増えてくる。

クァンヒョンに一命を救われたソ・ウンソ(チョ・ボア)は悪性の乳がんを患っていた。症状は進行しており、ウンソを救う方法は外科手術しか残されていない。しかし、儒教道徳の教えにより、身体にメスを入れることは許されることではなく、周りの人々から手術を受けることを反対される。さまざまな葛藤の中、反対を押し切り手術が開始される。

このシーンでは、手術を始める前に「麻醉参」を服用し、全身麻酔をかけている。流石に鍼麻酔で手術は無理があるか…。

乳がんの麻酔と言えば、華岡青洲(1760~1835)が連想されるであろう。青洲は初め古方派の吉益南涯に師事し、後に大和見水についてカスパル流外科術を学んでいる。そして、世界で初めて全身麻酔を行い、乳がんを治療したとされる。「日本医学史綱要2」から引用すると。

…刀を揮いて皮肉を割くの術に至りては、支那の外科はもとより言を俟たず、当時盛んに行われたる和蘭流の外科も、いたずらにこれを耳にするのみにして未だ手を著くるに及ばざりしものなり。こころみに、その十二の例証を挙ぐれば、乳癌、鎖肛、鎖陰、石淋、脱疽、痔漏、流注、兎脣、骨瘤、腐骨疽等の難症に対しても、華岡青洲は霊妙敏活の手術を施したり。しかして特に挙ぐべきことは、華岡青洲がこれらの大手術を施すにあたりて、一種の麻酔剤を発明したことなり。

 この麻酔薬の発明は外科史上特記すべきととして、華佗の再来ともいわれ称えられた。その薬は「麻沸湯」(通仙散)と呼ばれ、成分は蔓陀羅花(マンダラゲ:チョウセンアサガオの葉)八分、草烏頭(トリカブト)二分、白芷二分、当帰二分、川芎二分(南星炒)とある。上記、脱疽や腐骨疽の手術のシーンも後半に登場する。

ドラマの内容が史実に基づいているかは定かではないが、この時代にこのような手術が行われていたとすると、日本よりも100年ほど早いことになる。朝鮮時代には、許浚(1539 - 1615)、舎巖道人(不詳)・李済馬(1838 - 1900)が三大医師として知られている。白光炫(ペク・グァンヒョン、1625 - 1697)は朝鮮第18代王:顯宗(1641-1674、在位は1659-1674)の時に活躍した人物であり、腫物の外科的治療の元祖ともいわれている。

後半では腫物の治療について書かれている「治腫指南」が出てくるが、本書は朝鮮の任彦国による1500年頃のものとされている。この「治腫指南」は早稲田大学の古典籍総合データベースで見ることができる。自宅に居ながら、このような貴重な本が読めるとは、なんともいい時代ですな~。鍼灸の配穴が書かれた図譜は興味深い。
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ya09/ya09_00050/ya09_00050.html

 

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