挫刺針法は浅層ファシア(Superficial fascia)へのアプローチである|ファシアと疼痛の関係について
挫刺針法とは
挫刺針法は塩沢幸吉によって考案された特殊鍼法である。効果はあるものの刺激が強いため、臨床に使用している鍼灸師は稀であろう。それ以前に、鍼灸学校で習うこともないため、一般的にその存在自体知らないのが実状である。
角田章著「特殊針法 図説・挫刺針法」によると、挫刺針法は次のように説明されている。
挫刺針法は、従来の針法とはまったく別種の針法である。これについて、創始者である塩沢幸吉氏は、「挫刺針法とは、挫刺に適する特殊な針を使用して、表皮・真皮及び皮下組織の一部を極めてミクロな状況下において刺切し、挫滅することによって、固有の刺激を発現せしめ、整体の機能変調を調整し、もって固体を正常に導くことを目的とする療法である。」と定義している。
上記写真のガーゼを皮下の浅層ファシアとすると、挫刺針で皮下組織を引っかけて牽引しているイメージである。
ファシアについてはこちらのyoutubeの動画が分かりやすい。
Fascia and Structural Integration with Robert Schleip ...
ファシアと疼痛の関係について
塩沢が挫刺を考案するに至った経緯はとても興味深い。
24才の婦人で、慢性胃炎の症状を起し、右側の背部から肩頚部に強度の疼痛を発し、さらに右上肢に強い倦怠を訴えて通院する患者があった。
この患者に約1年2カ月の長期にわたって、鍼灸治療、刺絡、按圧等諸種の方法を尽くしてみたが、その疼痛は一向に軽快しない。
(中略)
皮下織とおぼしきところまで数回にわたって線維を引き出しては切除したところ、患者は今までの苦痛が一掃したという。
以上のように、わずか1か所へ1回の手術を行ったのみで、1年余も苦労した疼痛が、完全に除去できた事実と、疼痛が皮下織に関係あることの事実が、著者に非常なる自信と興味を持たせた。塩沢幸吉著「挫刺針法」より
ここで、塩沢が皮下織と疼痛の関係について言及していることは特記すべきことである。上記youtubeの動画でも述べられているように、最近「筋肉の緊張と痛みの原因はファシアによる(仮説)」と報告があり、欧米の科学者の間で注目されている。
日本に於いては、ロルフィングや筋膜リリース、アナトミートレイン等の手技療法によりファシアは広く知られるようになってきている。しかし、これらは体表からのアプローチであるので、直接ファシアに働きかけることができる鍼法とは少し治療効果が異なるかもしれない。
ハナマル急上昇。。おそらくファシアと鍼治療については今後いろいろと業界雑誌や学会でも特集が組まれるであろう。
◎挫刺鍼法の参考資料
塩沢幸吉「挫刺針法」、医道の日本社、1967(絶版、国会図書館にて閲覧可能)
角田章「特殊針法 図説・挫刺針法」、謙光社、1982(絶版)
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