腰痛と心理的ストレス|非特異的腰痛の85%は原因不明であるとの報告が意味するもの
腰痛は日常よく見られる症状であるが、慢性的な腰痛で悩んでいる方は多い。
画像診断の結果で椎間板ヘルニア・すべり症・脊柱管狭窄症・変形性腰椎症などの診断をされた患者さんが、数回の鍼治療で痛みが軽減することは少なくない。鍼灸師であれば多くの人が経験していることであろう。骨が簡単に動くとも思えないのだが、どうした機序によるのであろうか。(鍼治療をしてもなかなか症状が寛解しないこともあるので、すべての腰痛が鍼で治るということではない。また、レッドフラッグも除外。ここでの指摘は骨の変形により神経を圧迫して痛みが生じるのではなく、筋肉や筋膜の問題で痛みが生じているものがあるのでは、ということである。)
また、急性腰痛やぎっくり腰のような非特異的腰痛の85%は原因が不明であるとの報告がされている。40歳を過ぎればなんらかの骨の変形は見られるかもしれない。つまり、腰痛の原因を損傷モデルに求めるには疑問符が付くということである。残念ながら、このあたりのことはあまりニュースにならない。
6.腰痛患者が初診した場合に必要とされる診断の手順
7.腰痛診断に於いて有用な画像検査は何か、またはその他に有用な検査はあるか腰痛患者に対してX線撮影を全例に行うことは必ずしも必要でない。(GradeA)
『腰痛診療ガイドライン 2012』p26,p30(南江堂)
昨年「腰痛診療ガイドライン2012」が上梓され、今年の春ごろには各新聞紙上で腰痛に心理的ストレスが関与しているという内容の報道がされた。また、雑誌やテレビでも同じような特集が組まれたりした影響もあるのであろうか、患者さんとの会話の中で「腰痛と心理的ストレス」が時々話題になることがある。
4.腰痛は心理社会的因子と関係あるか
腰痛の発症と遷延に心理社会的因子が関与している(GradeA)12.腰痛に患者教育と心理行動的アプローチは有効か
認知行動療法は、亜急性または慢性腰痛の治療に有効である(GradeA)『腰痛診療ガイドライン 2012』p21,p54(南江堂)
腰痛と心理的ストレスの関係については、2004年のヨーロッパのガイドラインですでに報告されている。腰痛のガイドラインは各国で発表されているが、全く同じということはなく評価が分かれる内容も随所に見られる。バイアスのかかる記載もあることだろう。
記事を読み返してみて、この「腰痛と心理的ストレス」の関係について、あたかも最新のニュースような報道はどうなんだろうかと思った。今まできちんと報じられなかったことの方がある意味驚きである。以前、臨床心理学の講義の時に、「心の時代と言われて久しいですが、いまだにカウンセリングの世界には時代の風は吹いていません。(苦笑)」と講師の先生が話されたのが印象的であった。ストレスといえば向精神薬、抗うつ剤…?どうも歳をとったせいか穿った見方をしてしまう。
※GradeA:行うよう強く推奨する、強い根拠に基づいている。質の高いエビデンスがある。
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